やまとの神さま
< 第46回へ 第48回へ >
第47回 2023年06月08日掲載
県文化財の「三間社流造」  海神社(宇陀市)


三間社流造の海神社本殿。内部では独立した2棟の建物が並び、これらを覆う屋根が架けられている=宇陀市室生大野で

 海(かい)神社は、同じ宇陀市室生(むろう)地区の室生龍穴(りゅうけつ)神社から祈雨(きう)の神、農耕の神の龍神を勧請(かんじょう)したとの伝承があります。主祭神は海の神、水の神とされる豊玉姫命(とよたまひめのみこと)。沿革は不詳ですが、明治の神仏分離で善女龍王社(ぜんにょりゅうおうしゃ)から海神社と改称されました。
 本殿は、江戸時代前期に造られ、檜皮葺(ひわだぶき)。一見すると、切妻屋根を持ち、正面の柱が4本で、間口が三つある「三間社流造(さんげんしゃながれづくり)」(一間は約1・8メートル)に見えます。しかし、よく見ると、平面的には独立した2棟の建物が並列しています。それぞれが春日大社(奈良市)に代表される建築様式で、間口が一つの「一間社春日造(いっけんしゃかすがづくり)」であり、これらを覆う流造の屋根を架けているのです。2棟それぞれの上に三角形の千鳥破風(ちどりはふ)を設けており、建物と屋根の間は吹き抜けです。このような構造は全国的に珍しく、県指定文化財となっています。
 境内に能舞台にもなる舞殿が残され、能面八つは奈良国立博物館が保管中。本殿、拝殿、舞殿、祓殿(はらいでん)、恵比須神社などには鎌倉時代を含め、多くの狛犬(こまいぬ)が奉納され、地域に大切にされています。
 近くの深谷龍鎮(ふかやりゅうちん)渓谷にある境外(けいがい)社の龍鎮神社は近年、「空気感が違い、神聖さを感じるパワースポット」として人気となっています。

(奈良まほろばソムリエの会会員 石川雅司)


(住所)宇陀市室生大野1655
(主祭神)豊玉姫命
(交通)近鉄室生口大野駅から徒歩約5分
(文化財)本殿が県指定文化財
(拝観)境内自由
(駐車場)無し
(電話)無し

 掲載記事(pdf)はこちら

トップページへ
COPYRIGHT (C) 奈良まほろばソムリエの会 ALL RIGHTS RESERVED.