やまと百寺めぐり
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第89回 2021年02月18日掲載
廃仏毀釈越え法灯守る  平等寺(桜井市)


鎌倉時代の建築様式の山門は、旧平等寺から残る唯一の建造物=桜井市三輪の平等寺で

 三輪山の神域に包まれるように鎮座する平等寺。桜井市金屋の大和川沿いに立つ仏教伝来の碑に近く、開基は聖徳太子と伝わります。周辺には古代の交易の場である海石榴市(つばいち)があり、山の辺の道など古道が交差しています。
 室町時代の三輪山古図では、大神(おおみわ)神社の神宮寺として多くの伽藍(がらん)があったことが描かれています。醍醐寺との関係も深く、修験道の霊地でもありました。
 明治初期の廃仏毀釈(きしゃく)で一時は廃寺となりましたが、多くの人の尽力で復1977(昭和52)年に平等寺の寺号が復興されました。丸子孝法・現住職が手作りで建てた「赤門」や、約30年かけて建造された本堂、鐘楼堂、釈迦堂(二重塔)などには、法灯を守ろうとした人々の思いが込められています。
 87(昭和62)年に完成した本堂安置の前立本尊・十一面観世音菩薩(ぼさつ)像は、蓮華座(れんげざ)も含めて樹齢1500年のヒノキを用いた一木造です。優雅な顔立ちや均整のとれた仏身は、同じ神宮寺だった大御輪寺(だいごりんじ)におられた十一面観音菩薩(ぼさつ)立像(現聖林寺、国宝)と重なります。廃仏毀釈を乗り越え、連綿と続く信仰の歴史を伝えています。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 藤井哲子】



■宗派 曹洞宗
■住所 桜井市三輪38
■電話 0744・42・6033
■交通 JR三輪駅から徒歩約10分
■拝観 境内自由。本堂拝観は要予約、300円
■駐車場 有(無料)



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