なら再発見
なら再発見トップページへ           第1回 2012年10月06日掲載                    第2回へ
天理〜桜井「山の辺の道」 ――見どころ食べどころ満載
 奈良盆地を南北に走り、「日本最古の官道」と呼ばれる古代の幹線道路「山の辺の道」。石上(いそのかみ)神宮(天理市布留(ふる)町)から大神(おおみわ)神社(桜井市三輪)までの約15キロが、ハイキングコースとして親しまれている。その中間付近の天理市柳本エリアには、崇神天皇陵(行燈山(あんどんやま)古墳)や黒塚古墳、長岳(ちょうがく)寺などの見どころが集まる。
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 「山の辺の道を歩きたいが時間も体力もないので、メーンのエリアを教えてほしい」。そのような質問には、即座に柳本エリアと答える。
 JR桜井線柳本駅を起点に4、5キロ歩くだけで十分。
 まずは崇神天皇陵へ。周囲を大きな濠で囲まれた、全長約240メートルの広々とした御陵だ。第10代崇神天皇の別名は「ハツクニシラススメラミコト」。初めて天下を治めた天皇という意味で、実在した可能性が見込める初の天皇ともされる。
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 崇神天皇陵の西側に「御陵(ごりょう)餅(もち)本舗」がある。国道169号に面した間口の狭い、小さな店だが、近隣住民や観光客に人気の「行列のできるスイーツの店」だ。私は地元バス会社の添乗員に教えてもらった。
 商品は「御陵焼餅」と「田舎おはぎ」、「みたらし団子」の3種類。すべてお薦めだが、私のイチ押しは御陵焼餅の「草餅」だ。 「御陵」という名の通り、崇神天皇陵と同じ前方後円墳の形で面白い。ソフトな歯ごたえで「赤ちゃんのほっぺたのように柔らかい」という表現がピッタリくる。
 しっかりとヨモギの味や香りがするし、甘すぎない粒あんがギッシリと詰まっていて、ぜいたくな気分になれる。これで1個147円(税込み)とは驚き。あー、また食べたくなった。
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 南に足を伸ばすと、全長約300メートルの景行天皇陵(渋谷向山古墳)もある。景行天皇は第12代天皇で、ヤマトタケルノミコトの父。
ソフトな歯ごたえの「御陵焼餅」
悲劇のヒーロー、ヤマトタケルは「古事記」に登場する人物の中で最も人気がある。
死の直前に詠まれた歌「倭(やまと)は国のまほろば たたなづく 青垣 山隠(こも)れる 倭しうるはし」はよく知られている。
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 崇神天皇陵から北東にある空海ゆかりの長岳寺は、創建当初の遺構である鐘(しょう)楼(ろう)門など多くの文化財があり、春のツツジでも知られる。山門の手前には石仏が並ぶ。
 寺の近くには観光情報施設「天理市トレイルセンター」(トレイル青垣)があり、休憩もできる。
 西に向かうと、黒塚古墳と黒塚古墳展示館。この展示館ではテレビドラマ「鹿男あをによし」のロケが行われ、物語のキーワード「サンカク」の謎がここで解けた。
 このように、柳本エリアは見どころ・食べどころが満載だ。散策には秋がもってこいの季節なので、ぜひ訪ねてほしい。

(奈良まほろばソムリエ友の会事務局長 鉄田憲男)
木陰に石仏が並ぶ長岳寺の山門付近=天理市柳本町  
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