やまとの神さま
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第3回 2022年04月28日掲載
根強い橿原宮跡説  神武天皇社(御所市)


神武天皇社拝殿=御所市柏原で

 神武天皇社は御所市柏原(旧掖上(わきがみ)村柏原)にあり、元はカシワ(柏)の密生地でした。「日本書紀」に神武天皇の宮は畝傍(うねび)山の東南とありますが、これを「西南」の誤りとし、古くからこの地を神武天皇橿原宮の推定地とする説があります。
 現在の橿原の地を訪ねた本居宣長も地元民から「かしばらの地は、ここから一里ほど西南に行ったところだ」と聞き、それを「菅笠日記」に書き残しました。随筆家の白洲正子はこの話に興味を持って神武天皇社にお参りし、「土豪に擁されて即位した神武天皇の宮跡に似つかわしい」などと1971(昭和46)年の著書「かくれ里」に書き残しています。
 神武天皇社の総代を務める藤井謙昌(よしまさ)さん(68)は「神武天皇の宮跡はここだという説は根強いです。旧地名・掖上の掖には、宮殿という意味があるそうです。明治の初めには『宮跡に指定されてしまうと引っ越さなければならない』ということで、証拠書類を焼き払い、指定を免れたという言い伝えがあります」。
 神社の周辺には国見山や本馬山があり、いずれも神武天皇が東征を達成した後、高い所から国土を見渡す国見をしたという嗛 間(ほほま)の丘の候補地とされています。

(奈良まほろばソムリエの会専務理事 鉄田憲男)


(住所)御所市柏原246
(祭神)神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)(神武天皇)
(交通)JR掖上駅から徒歩約15分
(拝観)境内自由。南の嗛 間(ほほま)神社は即位前の妻・吾平津媛(あひらつひめ)が祭られ、前面道路より拝観可
(駐車場)無

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