やまとの神さま
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第35回 2023年2月16日掲載
不比等が創始、狭穂姫伝説も  狭岡神社(奈良市)


狭岡神社の本殿=奈良市法蓮町で

 東大寺転害門から法華寺までが佐保路と呼ばれています。その中ほどに狭岡(さおか)神社の石と朱塗りの二つの鳥居が建っています。神社は鬱蒼(うっそう)とした森の中にあります。奈良時代の初めに藤原不比等が国家鎮護と、藤原氏の繁栄を願って邸宅の佐保殿の岡の上に創始したと伝わります。
 氏子さんの話では、藤原氏は、狭岡神社に参籠(さんろう)して「日待ちの神事」を行ってから、春日参りをしたそうです。
 祭られている天神(あまつかみ)八座は、山から下りてくる田の神の若山咋神(わかやまくいのかみ)をはじめ、田植えの女神、田に水を引く神、夏の太陽の神、秋の収穫の神、稲の成長の神など五穀豊穣(ほうじょう)の神々です。
 鳥居をくぐると左手に垂仁天皇の皇后の名前を刻む「狭穂姫(さほひめ)伝承地」の石碑が建っています。狭穂姫は反乱を起こした兄と天皇のどちらにつくか苦悩し、兄に従うことを決めましたが、炎につつまれて亡くなりました。狭穂姫が幼いころに水面に姿を映したと伝わる鏡池もあります。
 石段を上がると佐保に邸宅のあった大伴家持に笠女郎(かさのいらつめ)が贈った万葉歌の碑が建っています。「君に恋ひいたも術(すべ)なみ平城山の小松が下に立ち嘆くかも」。悲恋に終わった女郎の息遣いが聞こえてきそうです。

(奈良まほろばソムリエの会会員 竹内和子)


(住所)奈良市法蓮町604
(祭神)若山咋神、若年神(わかとしのかみ)、妹若沙那売神(いもわかさなめのかみ)、弥豆麻岐神(みずまきのかみ)、夏高津日神(なつたかつひのかみ)、秋毘売神(あきびめのかみ)、久久年神(くくとしのかみ)、久久紀若室葛根神(くくきわかむろつなねのかみ)
(交通)奈良交通バス「教育大付属中学校」下車、徒歩約5分
(拝観)境内自由。駐車場無

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