やまとの神さま
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第39回 2023年03月23日掲載
日本唯一の夫婦大国さま  夫婦大国社(奈良市)


櫓が煙出しとして残る夫婦大国社=奈良市春日野町で

 世界遺産・春日大社の境内と周辺には、摂末社(せつまつしゃ)62社が点在します。その一つ、春日若宮社の南側に鎮座する夫婦(めおと)大国社(だいこくしゃ)は、古くから篤(あつ)く信仰されています。
 祭神は春日若宮社の神饌所(しんせんしょ)(台所)だった国重要文化財「手水屋(てみずや)」内の厨子(ずし)に祭られます。手水屋の土間には台所の名残として竈(かまど)や流し台が置かれ、?葺(こけらぶき)の屋根には煙出し(櫓(やぐら))が残ります。
 由緒は平安時代の1135(長承4)年3月甲子(きのえね)の日、春日社の正預(しょうのあずかり)(神職)中臣祐房(なかとみのすけふさ)が出雲の神霊を迎え、名工卜弁(ぼくべん)が二体の神像を彫り、手水屋の守護神として祭ったことに始まります。
 七福神の大黒天(大国主命(おおくにぬしのみこと))と妻の須勢理姫命(すせりひめのみこと)がそろって祭られ、日本唯一の夫婦大国さまです。須勢理姫命は、頭上に米櫃盥(こめびつたらい)を掲げ、右手に杓子(しゃもじ)を持つ珍しい神さまで、縁結び、商売繁盛、夫婦円満のご利益があるとされ、杓子を納める風習があります。現在はハート型の絵馬を奉納し、水に浸すと文字が浮かび出る「水占(みずうら)」も人気です。
 周辺の福の神十五社の巡拝もでき、高畑町からの参道(祢宜道(ねぎみち))には、葉を財布に入れると長者になるという竹柏(なぎ)が繁(しげ)っています。秋の恒例祭のほか60日に1度の甲子の日に甲子祭があり、いつも参拝者でにぎわいます。

(奈良まほろばソムリエの会会員 毛利明)


(住所)奈良市春日野町160
(祭神)大国主命、須勢理姫命
(交通)JR・近鉄奈良駅からバス「春日大社本殿」下車、徒歩約10分
(拝観)境内自由
(駐車場)有料(春日大社駐車場)
(電話)0742・22・7788

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