やまと百寺めぐり
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第71回 2020年10月01日掲載
大辯才天を祀る奥之院  霊山寺(奈良市)


富雄川の畔でひときわ目立つ朱塗りの鳥居=奈良市中町で

 霊山寺(りょうせんじ)といえば、春秋に咲き乱れる二百種千株のバラが有名です。
 奈良時代に創建され同寺は、本尊に薬師如来坐像(ざそう)を祀(まつ)る古刹(こさつ)で、さらに辯才天(べんざいてん)を祀る寺としても知られています。
 仏教では天部の諸神を祀る所に鳥居が建てられ、境内に立つ鳥居には「大辯才天」の額が掲げられています。そこに掛かる注連縄(しめなわ)は雲、紙垂(しで)は雷、〆(しめ)の子は雨を表しています。龍神が恵みの雨を降らせているようです。
 富雄川の畔(ほとり)に立つ立派な鳥居から約1㌔先に奥之院があります。弘法大師空海がこの寺で感得したという龍神様を大辯才天として祀ってきました。
 インドでは辯才天は水の女神、わが国では龍神が水を司(つかさど)る神。1959(昭和34)年に大辯才天を祀る総漆塗り金箔(きんぱく)押の黄金殿が、次いで、77(昭和52)年に大龍神を祀る白金殿が建立され、それぞれお祀りするようになりました。
 「お祖母(ばあ)様の夢に大辯才天が現れ、そのお告げにより、寺運は隆盛しました」との東山光秀(とうやまこうしゅう)管長のお話です。
 深い緑の中に静かに佇(たたず)む奥之院。凛(りん)とした張り詰めた空気に触れると身が引き締まる思いがします。ぜひ奥之院にも足を伸ばしてみてください。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 尾花雄二】



■宗派 霊山寺真言宗
■住所 奈良市中町3879
■電話 0742・45・0081
■交通 近鉄奈良線富雄駅より奈良交通バス「霊山寺」下車すぐ
■拝観 本堂10~16時、バラ園8~17時、500円(バラ見頃期は600円)
■駐車場 有(無料)



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