やまと百寺めぐり
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第77回 2020年11月12日掲載
異国の面影、薬師如来  東明寺(大和郡山市)


東明寺の紅葉は11月末が見ごろ=大和郡山市矢田町で

 横山口のバス停から徒歩30分、急坂を登ると東明寺(とうみょうじ)の山門にたどり着きます。樹々の香りに包まれた矢田丘陵の高所に建つ山岳寺院です。
 開基は693(持統7)年、日本書紀を編さんした舎人(とねり)親王によると伝わります。持統天皇の眼病回復を祈り、この山の霊水で眼を洗うとたちまち平癒したとのことです。
 本尊の薬師如来坐像(ざぞう)には独特の魅力があります。二重まぶたの異国的な風貌に、引き締まった逆三角形の体躯(たいく)が力強く若々しい印象です。桜の一木造り、平安時代の作とされています。衣には濃い朱、肌には淡い朱が施されていました。
 この像に付けられている板光背(いたこうはい)には、墨で見事な唐草文様が描きめぐらされていたことが、赤外線調査でわかっています。全面に踊るように翻る文様を、堂内の写真パネルで見ることができます。
 朱(あか)い薬師如来像と黒い唐草文(からくさもん)。そのコントラストは、本尊の持つ霊力を一層際立たせていたことでしょう。
 山深く静かな境内に、子どもたちのにぎやかな歓声がわき、驚かされることがあります。近畿自然歩道が境内を抜け、子どもの森へと向かうハイキングコースになっています。
【奈良まほろばソムリエの会 会員 西慶子】



■宗派 高野山真言宗
■住所 大和郡山市矢田町2230
■電話 0743・52・7320
■交通 近鉄郡山駅またはJR大和小泉駅からバス「横山口」下車、徒歩30分
■拝観 9~17時、500円。要予約(6月1~15日は予約不要)
■駐車場 10台(300円)



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