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第26回 2021年10月14日掲載
「な」 奈良の鹿春日大社の神のお使い
 奈良時代、平城京守護のために茨城県の鹿島から武甕槌命(たけみかづちのみこと)が白鹿に乗って御蓋山(みかさやま)に降臨されたと伝えられています。それを描いた鹿島立神影図(かしまだちしんえいず)を、京都の公家は自分の屋敷に掲げて礼拝したようです。奈良の鹿は、この鹿の子孫と言われ、大切に保護されています。
 万葉集では大伴家持らが鹿のことを詠み、奈良時代は比較的のどかな世界として描かれていますが、興福寺が奈良を支配した中世では「神鹿(しんろく)」と尊ばれ、殺した者は死罪となりました。ある時、子どもが習字の紙を鹿に食べられそうになり、追い払おうと投げた文鎮が鹿に当たり死なせたため、罰せられた悲しい言い伝えがあります。
 1957(昭和32)年、奈良市一円の野生の鹿が「奈良のシカ」として国の天然記念物に指定され、毎年6月は愛護月間です。近年は1200頭前後が生息していますが、過去に頭数が減った時期もあり、「奈良の鹿愛護会」が交通事故などでけがをした鹿を鹿苑(ろくえん)で保護しています。6月は子鹿の公開が行われ、10月は1672(寛文12)年に奈良奉行の溝口信勝が始めた鹿の角きりが行われます。飛火野(とびひの)でナチュラルホルンの音色で鹿を呼び寄せる鹿寄せは1892(明治25)年の鹿苑竣工奉告祭が始まりです。
 奈良公園の芝生は鹿が食べるため、芝刈りが不要と言われ、樹木の枝葉を食べることで下の部分が一定の高さにそろい、「deer(ディア)ライン」と呼ばれます。公園以外に春日山原始林にも生息しており、県庁所在地に原生林が残るのは春日の神域だけです。

(奈良まほろばソムリエの会会員 谷昌佑紀)


【春日大社】
(住所)奈良市春日野町160
(祭神)タケミカヅチノミコト、フツヌシノミコト、アメノコヤネノミコト、ヒメガミの四柱
(交通)近鉄・JR奈良駅からバスで約10~15分
(駐車場)有(有料)

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